空に美しく映える白い壁と、外観のアクセントとなる片流れ屋根。周囲の街並みの中でもひときわ目を引くM様邸は、店舗を併設したスタイリッシュな3階建て住宅だ。「Oceanflot」（オーシャンフロート）と店名が書かれた1階部分は、ご夫婦が経営する美容室。2・3階は二世帯の住居スペースになっている。

「最初は店舗併設にするつもりではなかったんです。住まいと店舗は別々に考え、家を建てるための土地を探していました」

そこから詳しく考え始めたのが、店舗の立地条件や子育て環境のこと。これからの生活や仕事のしやすさを考えて、店舗併設の住まいを建てることを決めた。

プランを検討するにあたり、1階の店舗部分は主にご主人が担当。2・3階の住居スペースは奥様とそのお母様が担当し、それぞれの理想のイメージを反映させていった。

「店舗の中で特にこだわったのは内装です。できるだけシンプルな空間にしたいと考え、自分のイメージに近い写真を用意しました。壁の素材などもイメージをお見せし、それに似たものをインテリアコーディネーターさんに提案していただきました」

そうして完成したのが、白とブラウンを基調にした落ち着きのある内装。暖色の間接照明も取り入れて、あたたかな雰囲気を演出した。

一方、間取りにもM様のこだわりが詰まっている。プランニングにあたって一番の課題となったのが、限られたスペースの有効活用である。設計担当者は店舗と住宅の駐車場を確保した上で、必要なスペースを割り振っていった。その上で建物内の間取りを考えていくことになったが、美容室に来られるお客様には開放感を感じてほしい。そこで三交ホームは、カットスペースの上部に吹き抜けを設けることを提案した。

満足のいく店舗づくりを実現するためには、法的な制限なども理解した上で設計を行う必要がある。三交ホームの各担当者は、店舗建築について勉強を重ねながら提案を進めていった。店舗内のスタッフの動きやすさやお客様同士の距離感を考え、2席あるカットスペースは十分な距離を確保。また、シャンプーの際にお客様が人目を気にしなくてすむよう、シャンプールームを個室にした。

「他にこだわったのは、受付の背面にスモークがかった鏡を貼ったことです。お会計の際にお客様が受付の前に立った時、ご自分の姿がここに映ります。座った状態で見た時と立った状態で見た時では、髪型のニュアンスは違うものです。ご自分の姿に気づいた時、『いいスタイリングだな』と思っていただき、気分を弾ませて帰っていただきたいと思い、こんな工夫をしました」

では、2・3階の住居スペースにはどんなこだわりが注がれているのか。プランを検討する上でヒントになったのが、以前マンションで生活していた時に不便さを感じた経験だった。

「当時から妻のお母さんと同居していたのですが、私たち夫婦とお母さんはそれぞれ仕事を持っているため生活時間がバラバラでした。私は毎日、朝早くから仕事に行って遅く帰ってくる生活。みんなを起こさないよう、そっと帰ってきてそっとお風呂に入って寝る必要がありました」

2階と3階にそれぞれ浴室とトイレを設けたのも、そうした不便さを解消するため。その他すべての間取りの検討を、奥様が中心となって進めていった。収納スペースをしっかり確保することや、使いやすい動線にすること。そうしたご要望を聞いて三交ホームがプランを提案し、理想のイメージに近づけていった。

「住居スペースの間取りについては妻に任せましたが、期待していた通りの過ごしやすい家になりました。この家を建てたのは、私が仕事を独立したタイミングです。以前はなかなか家族と過ごす時間を取れませんでしたが、家と仕事場が同じ場所になったことによって、家族サービスできる時間も増えました」

M様にとってこの家は、家族と過ごす時間を楽しむ家であるとともに、仕事を通して夢を形にしていくための家でもある。美容師という仕事をする上でM様が一番大切にしているのは、お客様の喜びに貢献することだという。
「この店でより多くのお客様にすてきな体験を届けていきたいと思います。『きれいになりたい』というお客様の気持ちに応えていきたいですね」

多くのお客様に、落ち着いた雰囲気と空間の心地よさを感じてほしいと話すM様。その表情から、納得のいく住まいと店舗を完成させた満足感が伝わってきた。