Interview 02 山を育てるひと。

株式会社フォレストファイターズ 丹羽宏哉さん

山を繋いでいく。先輩から自分、そして次の世代へ。

三重県大台町は、三交ホームの木の家に使用される木材の主要産地。ここには豊かな自然環境が息づき、山を育てるプロフェッショナルが活躍しています。この町で林業に従事する丹羽さんにお話を聞きました。

Q.フォレストファイターズの仕事について教えてください

私たちフォレストファイターズは、林業の中でも木を切ること、木を育てることに関わるさまざまな業務を行っています。仕事内容は山の状態に合わせて変わっていきますが、ちょうど今の時期は間伐が仕事の中心。間伐とは、成長を妨げる木を間引く作業のこと。山を育てるには欠かせない仕事です。
早朝に山に入り、切る木を選木するところからこの仕事は始まります。幹の太さ。穂先の曲がり具合。枝の広がりかた。最後は勘で、切るべき木を決めていく。この選木は経験がものをいいます。私はこの仕事をはじめて12年が経ちますが、未だに先輩には追いつけません。木を見ることは実に奥が深いんです。そして木を選んだらチェーンソーによる倒木です。作業量は、一日で大体2反ほど(約2,000㎡)。密集している山だと、本数にして150本ぐらいでしょうか。これだけ切ると、間伐前に比べてずいぶんスッキリした山になるんですよ。

Q.間伐をしないと山はどうなるのですか?

山に苗木を植えて、10年以上が経ち、木々が生長してくると隣同士で枝葉が重なりあうようになっていきます。すると、日光が当たる面積が小さくなり、また土壌の栄養分の取り合いになって互いの成長を阻害することになるんです。弱い木はそのまま腐り、生き残った木も上手く成長できません。場合によっては腐った木の周辺の土壌が荒れ、土砂災害の原因になることも。そういった山の災害を未然に防ぎ、住宅に使える良木を育てるために適切な間伐が必要なのです。間伐をすると木の根元や地面にまで太陽光が十分に届きます。それによって木はしっかりと根を張り、大きく真っすぐに育つことができるのです。

Q.仕事中、気をつけていることはありますか?

何より安全第一。大台町の山は、急峻で、危険な場所が多い山です。重機を持ち込めない場所もザラにある。だからこそ、常に集中力を切らさず、無事に山を降りられるように心がけています。それと、切るときに気をつけているのは残す木のこと。間伐の際、残すと決めた木はこれから数十年かけて育てていく木です。枝も皮も一切傷つけたくない。だから倒木の際は細心の注意を払って、残す木に触れないようにします。数年後、同じ山に訪れたとき、残った木がすべて美しく立っていることが、私たちの腕の見せ所だと思います。

Q.この仕事のやりがいを教えてください

植林して間伐をはじめ、建材に使える木に育つまで、大体60,70年ぐらいかかります。自分が間伐した山から住宅用の木を出す頃には、私は生きていないかもしれない。それだけ気が長く、答えの見えない仕事です。でも、支えはちゃんとあって、それは先輩たちが間伐した山に入ると感じます。言葉では伝えにくいのですが、すごくきれいなんですよ。幹の太さが均等で、高さも揃っている。枯れ木がなく、枯れ枝も見当たらない。下草も生えて土壌の強さも十分。人工林として理想的な成長をしている。それは自然に出来たものではなく、確実に先輩たちの仕事なんです。その大台町の山を引き継ぎ、さらに良い山を育て、将来の後輩たちにバトンタッチしていく。それがこの仕事の大きなモチベーションに繋がっていると思います。

株式会社フォレストファイターズ
丹羽宏哉さん
三重県津市出身。自動車部品の営業を経験した後、体を動かす仕事がしたいと2002年に入社。大台町の山を中心に、間伐や枝打ちをはじめとする育林業務から、良質な木材の伐採、搬出なども行っている。