三交ホームの木の家に使われる木材の、ほぼすべてを供給するプレカット工場エム・エス・ピー。この工場の品質が、そのまま家の精度に直結する。この大事な役割を担う工場長の中井さんにお話を聞きました。
1993年の設立以来、木材のプレカット工場として稼働してきました。土台から梁、通し柱、筋交い、垂木、床合板といった、木造住宅の上棟までのすべての部材を加工しています。生産量としては一年で大体600棟ほど。三交ホームさんの家はすべてウチの工場で加工した建材を使用しています。
私はその中でも工場長という立場で、元々大工だった経験を活かして社員への技術的な指導、工程管理、品質管理などをしています。同時に大工仕事も続けていまして、手仕事でないと難しい依頼などは今でもひとりの大工として手を動かしています。
これまで大工がやってきた伝統工法を、機械で実現させたことは大きな意味があると考えています。たとえば、昔からある木と木を繋ぐ「継ぎ手」の技術。従来、プレカット工場の機械加工では一種類しか出来なかったんですね。“鎌継ぎ”という継ぎ手です。これは形がシンプルな分、若干弱く補強が必要でした。そこでエム・エス・ピーではロボットを導入し、メーカーとソフトを開発してより高度な継ぎ手を実現させたんです。“台持ち継ぎ”や“追掛け大栓継ぎ”と呼ばれる、大工の間では上等な仕事と言われる継ぎ手です。これによってグッと強度が高まりました。また、こういった特殊な加工ができるからか、他の工場で断られた依頼が来るんですよ。変形の台形した屋根だとか、構造をぜんぶ化粧材でみせたいとか。そういうのは大手では対応しきれない。でも、うちではなるべく受けるようにしています。大変なことが多いですが、確実に自分たちのスキルアップに繋がりますから。
従業員が木のことを分かるようにする、ということにはずっと心を砕いてきました。これは設立から20年以上、ずっと言い続けてますね。木は生き物です。どれだけ機械が発達しても、一本一本の木目を見極めて、適材適所に使ってあげないと意外なミスが生まれる。たとえば、木の中には木目とは逆に反る“アテ材”という突然変異みたいな木があるんですが、何百本もあればどこかで混ざってしまうわけです。それを見極められないと、想定外の反りをして、ときには屋根が凹むような事態が起こる。これは人の目じゃないと分からないです。それも経験がすべて。何度も木を見せて、丁寧に指導する。それをずっと繰り返してようやく木を選べる。完璧とは言えませんが、ウチの従業員の木の目利きはなかなかのもんですよ。
機械に任せられることと人がやるべきことを、バランスよく増やしていきたいと思っています。工場で言えば、大工の伝統的な継ぎ手をいくつか実現できましたが、まだまだ出来ないことの方が多い。たとえば、ドリルを使って穴を空けるような工程は機械に任せたい。同時に、大工の手仕事はきちんと残したい。やっぱり技術というものは使わないと衰退してしまうもの。ひとりの大工として、出来るだけ次の世代に伝承していきたいと思いますね。それもあって、個人的な目標としては、定年退職後はまた大工に戻りたい。やっぱり、大工という仕事が好きだから。体が動かなくなるまで、大工でいたいと思う。