第12回コラム / 大人になっても、何度でも読んでみたい絵本「星の王子様」と「おおきな木」
子供の頃に大好きだった絵本を思わず手にとり、どんな内容だったのか、その頃はどんな気持ちだったのか、想いを巡らせたことはないですか?そこで、数ある絵本の中から名作といわれている作品を2冊紹介します。
1冊目は、フランス人作家 サン=テグジュペリによる名作
『星の王子さま』人間の絆や愛の意味を問う哲学的な童話として、1943年にアメリカで発表されてから、今もなお世界中の人を魅了しつづけている作品です。
物語の中心となるのは、ある小さな星に住んでいる王子さま。
彼は大切に世話をしていたバラとささいなことで言い争い、自分の星を飛び出してしまいます。さまざまな星を巡るなかで出会ったのは、命令することが大好きな王様やひたすら星の数を数えている実業家、規則に従って灯りを点けたり消したりしている男、自分の机を離れたこともないという地理学者など、奇妙な大人ばかりでした。さまざまな星で王子さまが出会う人物は、想像力を持たず、自分の頭で物事を考えることができない愚かな大人の象徴として描かれています。
サン=テグジュペリが作品の冒頭で「大人はだれも、はじめは子どもだった。しかし、そのことを忘れずにいる大人は、いくらもいない」と書いているように、この作品は、子供の心を忘れてしまった大人に向けた物語です。
文中には現代においても心に残るたくさんの名言があります。
「共に過ごした時があるからこそ、かけがえのない、唯一の存在になるのだ」
「本当に大切なものは、目に見えない」
「心の中に一輪の花を持っているというものではなく、この世の中に花はたくさんあるけれど、自分が大事にする
たったひとつの花がある」
物語の中でサン=テグジュペリは問いかけてきます。「絆とは、愛とは、幸福とは何か、そして型にはまらず、想像することの大切さとは・・・」たしかな正解がない、その問いかけに考えさせられます。哲学的な童話といわれるゆえんでしょう。
次に紹介するのは
アメリカ人作家 シェル・シルヴァスタインのロングセラー
作品『おおきな木』。作者は1969年、1984年にグラミー賞を受賞するなどシンガーソングライターとしても有名です。また、日本では村上春樹氏が日本語翻訳をしたことが話題になりました。翻訳する人によって解釈の仕方が違う作品です。
物語の内容は、成長していく少年といつまでも少年を愛したりんごの木のお話です。
りんごの木と少年はとても仲良しでした。少年はいつも木と遊び、心を通わせていました、だから木はとてもうれしかったのです。
やがて、少年は成長し、大人になり、木に会いに来なくなります。
ある日、大人になった少年が木のところへやってきます。木は昔のように遊んでおいきと言いますが、彼は言います。「買い物が してみたい。だから お金が 欲しいんだ。 おこづかいを くれるかい」木は困りましたが、りんごの実をすべて与えます。次に家を欲しがり、その枝を与えます。さらに遠くへ行きたいという少年は船を欲しがり、ついにその幹を与え、とうとう、りんごの木は切り株だけになりました。そして、少年は去っていきました。
時が経ち、年老いて帰ってきた少年。そして「疲れたので休む場所がほしい」と言います。木は「切り株の私に腰をかけなさい」と言いました。男は腰をかけました。木は最初から最後まで幸せでした。
この作品には、さまざまな解釈があります。大好な少年のために与え続けたりんごの木は本当に幸せだったのでしょうか?木が少年にしてあげたことは、少年のためになったのでしょうか?
50年ほど前の作品ですが、現代社会において、正しい愛のカタチは何なのかと問われているような作品です。
ご紹介した2冊はお勧めする大人の絵本です。何度、読みかえしても、その度に考えさせられる作品です。1度、読んでみてはいかがでしょうか。
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