名古屋市役所本庁舎は昭和天皇の即位を記念した事業として昭和8年に完成しました。デザインは一般公募され、599案のなかから西春日井郡出身の建築家平林金吾氏のデザインが採用されました。その特徴は、近代的なビルに二重の瓦屋根を乗せた「帝冠様式」。
   特に印象的なのが、中央にそびえる 高さ53mの時計塔です。その上部には二層の瓦屋根が乗り、シャチホコが四方に睨みをきかせています。

   内部は名古屋城の本丸御殿をイメージしながらも、日本と西洋のデザインを融合した、格調高い設計となっています。北側の廊下は非常に長く、全長約100mもあります。重厚かつ長い廊下は珍しく、映画やドラマの撮影でも度々使われました。三谷幸喜原作・脚本の映画「笑の大学」ではこの北側廊下が重要な役割を担っているほか、「ＳＰ 革命編」「謝罪の王様」などの映画をはじめ、「官僚たちの夏」「華麗なる一族」などのテレビドラマも撮影されました。
   また、名古屋市議会の本会議が開かれる議場は全国的にもめずらしい円形をしています。これには議会が円滑に進むようにという思いが込められているとされています。

   昭和13年に完成した愛知県庁舎も「帝冠様式」ですが、とくに名古屋城を彷彿させる大屋根印象的です。内部の貴賓室は華麗な装飾が施されていて、鳳凰をモチーフにしたとされる漆喰でできたレリーフに目が奪われます。
   愛知県のシンボル、名古屋市役所本庁舎と愛知県庁舎。どちらも、デザインが優れ歴史的価値が高いことから、平成26年に国の重要文化財に指定されました。

「ダンシングハウス」自由と民主主義、そして世界的な現代建築を象徴する建物
チェコ共和国の首都「プラハ」。
   美術館・博物館が多く存在し、それ以外にもヨーロッパの古代美術ならシュテルンベルク宮殿、中世美術なら聖アネシュカ修道院など芸術に触れる機会が多くあります。音楽においては我が祖国シリーズの「モルダウ」で知られるベドルジハ・スメタナ、交響曲第9番「新世界より」のアントニン・レオポルト・ドヴォルザークなど、プラハで活躍した偉大な作曲家が多く存在します。また、文学では20世紀を代表する作家フランツ・カフカの出身地で、街のあらゆるところで彼の顔写真が目に入ります。そして、なによりも魅了されるのは中世ヨーロッパの雰囲気が現在も残っている街並であるということ。当時の建物をそのまま使用し、痛んだ箇所のみ修繕していくことで、街の歴史を継承し、残していこうとする姿勢が現在のプラハの街並を形成しています。
   その伝統的な景観の中でひと際目を引く異色的存在の建物があります。「ダンシングハウス」（正式名称はナショナル・ネーデルランデン・ビル）。歴史的建築で知られるプラハにおいて最も有名な現代建築です。このスタイリッシュで近代的な「踊るビル」には非凡な歴史があります。
   第二次世界大戦で爆撃を受け何十年にもわたってこの一角は空き地のままでした。1980年代、クロアチア系チェコ人の建築家ウラジミール・ミルニッチは、この敷地に隣接する建物に住んでいました。その彼の隣人は反体制派のリーダーとして後にビロード革命を率い、チェコ共和国の初代大統領になったヴァーツラフ・ハヴェルです。ミルニッチがこの敷地にモダンな建物を建てる計画をハヴェルにもちかけると、ハヴェルはそのアイデアに賛同し、その建物が文化の中心地になることを願いました。ハヴェルがオランダの銀行に建設資金の融資を依頼したところ、銀行は建築家をもう1人、プロジェクトに参加させることを条件としました。こうして選ばれたのが、カナダの建築家フランク・ゲーリーでした。ゲーリーはミルニッチの図案をもとに1996年にナショナル・ネーデルランデン・ビル（踊るビル）を完成させました。歴史あるプラハの中心地に非対称のゆがんだ近代的建物が造られることを、誰もが歓迎したわけではありませんでした。それでも、多くの人にとって自由と民主主義、そして世界的な現代建築を象徴する建物となり、現在では有名な観光スポットになったのです。

「ブルジュ・ハリファ（バージ・カリファ）」世界最高層の建物
   世界中のセレブからも注目されている7つの首長国からなるアラブ首長国連邦最大の都市ドバイ。ビーチ沿いには7つ星ともいわれる豪華リゾートが軒を連ね、小さな町の中だけでも5つ星ホテルが30件以上も存在する高級アラビアンリゾート地です。その中心部に青空を突き刺すように高く伸びる
世界最高層の塔「ブルジュ・ハリファ」。
   2017年1月現在、居住区がある建築物として世界最高層です。
   映画「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」で主演のトム・クルーズが高層ビルのアクションシーンでビルの側面を走って移動したり、部屋からダイブしたりと、通常では考えられないようなスタントを自らこなしたことでも知られています。
   2014年に完成したこの建物は高さが828mで内部は160階建てになっており、居住区は44-72階、77-108階にあります。他にもホテルやレストラン・ブランドショップなどが入り、上層部にはオフィスと展望台になっています。この建物から見下ろす隣接地には1,200店舗ある世界最大級のショッピングモールである「ドバイモール」があります。
   世界最高峰であるブルジュ・ハリファですが、中東有数の世界都市であるサウジアラビアのジッダで現在建設中のジッダ・タワーが1,000mを超える予定です。計画が開始された2011年当初は高さ1,600mを想定していたようですが、土壌調査の結果から、1,100mに変更されたようです。※完成は2019年6月（予定）。

   世界には美しい建物が数多くあります。あなたは「美しい建物」と聞いてどんな建物を思い浮かべますか？旅行先で感銘を受けた建物。それとも、これから訪れてみたい建物でしょうか。いずれにしても、人生の美しい想い出の1ページとして残せたら素敵ですね。